宮大工の棟梁に学ぶ人材育成の本質
経営者にとって人材の育成は永遠の課題なのかもしれません。
性格や考え方がまったく同じ人間はいないわけです。
その人は、これまでの自分の人生を生き抜く(自分を守る)ために
その性格が必要だったわけです。
だから、たとえ社長であっても従業員の性格を変えることはできないのです。
ここが、人材育成の難しさなのでしょう。
大工の中でも最高水準の技術と心構えを持つ宮大工。
いったい、彼らはどのようにして育つのか?
「現代の名工」にも選ばれた宮大工棟梁の小川三夫さんの言葉は、
人材育成に悩む経営者の心に響くことでしょう。
小川三夫さんの「技を伝え、人を育てる 棟梁 (文春文庫)」は、人材育成の本質に気づかされる一冊です。
「心に響く棟梁の言葉」
”「育てる」と「育つ」は違う。「育てる」というのは大変な仕事や。しかし、「育つ」となれば話は別や。育つための環境と機会を用意してやればいいわけだ。”
”その現場を任せるのや。任されたものも早ければつぶれるし、施主さんに迷惑がかかる。しかし、任せる時期が遅かったら人は腐るで。”
”その人が完成してから任せたらだめなんだよ。未熟なうちに任せるんだから、任される方もできるとは思っていないのだけれど、親方がやれと言ったから、俺もできるかもしれないという、このタイミングだな。”
”ここでは修業は最低十年かかると言ってある。その時間の長さに負けて辞めていく者もいたよ。他と比べてものを見るようになると時間に負けるな。長い人生で考えたら十年なんてすぐ終わる。”
”叱るときは、気づいたときにその場で素直に言ってやることや。小利口に後になってというのはあかん。一番しみこむのは失敗したその時や。”
”叱るといっても、叩いたり、小言を言ったり怒鳴ることばかりやないで。何も言わない叱り方もある。叱られたかどうかは自分が感ずるもんや。”
”木に癖があるように人にも癖がある。その癖を見抜いて、生かしてやるのが務めや。”
”百人いれば百人の考えがある。これを一つにまとめて仕事を完成させるのが棟梁だ。それができなかったら棟梁が自分から役目を下りろと言ってるんだな。リーダーへの戒めや。”
”組織は生もの。同じメンバーでずっとやってきていたら、腐ったようになっていっただろうな。”
”人に任せ、人に譲ることで、伝統の技を生きたものとして伝えていけ”
小川三夫 『技を伝え、人を育てる 棟梁 (文春文庫)』より抜粋